ケンショウ学級


「と、とにかく起きたなら並びなさい。アキラももういいよな?行くぞ。06番10番は速やかに移動!」

そう言って春馬はアキラを連れてフリースペースへと戻っていった。

「耳いてぇよ」

亮二は右耳を抑えながら顔をしかめていたが、巻き込まれた僕の気持ちとかは考えてくれているのだろうか?僕は亮二が眼鏡をかけるのも待たずに先に白線に並んだ。

それからすぐに亮二が僕の隣に並び、朝の点呼確認が行われる。

「それでは点呼確認をする!番号!!」

点呼確認は人数の把握なので識別ナンバーではなく単純に左側、つまり僕から1~10の番号を言っていく。

「1!」、「2!」、「3!」、「4!」、「5!」…… 「10!」

点呼確認は至る機会に行うので皆も慣れ、ハキハキと言いつなげていく。

「よし、10人揃っているな。それじゃあ朝の体操を……」

そう田口くんが言いかけた時、アキラがしかけてきた。アキラは無造作に前に出て、黙って手を挙げた。

「なんだよ里見?」

田口くんの問いに、アキラは黙って事務室の中央に掛けてある時計を指さした。

現在時刻6:08。

「朝の体操は6:05から始まるはずだが、今は3分も過ぎてしまっている。こうなったのは、寝坊した10番!お前のせいだよな」

睨みつけるアキラに、亮二は目を逸らした。場の雰囲気は凍りついている。

「いや、まぁ確かに遅くなったのは10番を待っていたからだけど、たかが3分じゃん」

田口くんは平和裏に進めようとしてくれている。だけれどもアキラは断固としてそうではないようだ。

「いやいや田口、よく考えてみろ。まだ3日目だぞ?

後11日も秩序を持って過ごさなければならないのに、今日ここでこの3分をおとがめ無しにしてしまったら、明日はどうなる?5分遅れも良いのか?何も罰則がなければ秩序は乱れる」

アキラの豹変ぶりには、直接的に不利益をこうむるかもしれない囚人達だけでなく、気の弱い看守達まで震え上がらせていた。

「ちっ、じゃあてめぇは10番に何をさせたら満足なんだよ?あ?」

語気を強めてそう言ったのは意外にも佐野くんだったので、僕は少しビックリしていた。

「……そうだね。皆の貴重な時間を3分も奪ったんだから相応の罰が必要だと思うな。

そうだ、佐野くんも言ってたけど“腕立て伏せ“なんていいんじゃないか?遅れた1分毎に10回で、3分の遅れだから30回で今回はどうだろう?」

まるで議論の司会進行かのようにアキラは看守達に目で訴え、誰も異議がないと見るや、罰則があることを知らせる為に囚人達を見回した。

「ちっ。10番さっさと腕立て伏せ30回やっちまえ」

自分が提案した罰だったこともあるのか、佐野くんはその提案に乗った形で、亮二に催促をした。

「あぁ待って。ここは監獄だ、同じ独房の者にも責任はあるだろう。06番おまえもだ」

え?亮二が寝坊して、起こそうとした挙句に看守に胸ぐらを掴まれて、その上さらに連帯責任を取らされるだって?さすがに理不尽だろう。

「時間の無駄だ、早くやれ06番と10番」

「はい……」

「つっ、はい」

僕と亮二は床に手をつき皆の目の前で腕立て伏せを30回させられた。確かに暴力は振るわれていないが、屈辱ってこういう気持ちを言うのかもね。

先に30回やりおえた僕は、立ち上がって白線に戻り、アキラを睨みつけた。

アキラは必死で腕立て伏せをする亮二を見下して、満悦そうに笑っていた。