囚人役の役割(生活)は大まかに分けてこうだった。各自独房にて朝食、本来なら労働をするのだろうけど代わりに僕らは勉強を強いられた、昼食のみ食堂で皆で食べる、そしてまた勉強をして30分の自由時間が与えられた。その後、独房で夕食を食べ、就寝する。
看守役は主に囚人の監視と世話をすることが多いようだ。食事内容などは別室で食べているようで分からないが、食後の様子から囚人とは違うメニューが配られている感じは受け取れた。
要所要所で識別ナンバーによる点呼確認をされた。名前を剥奪されるなんて、普通ならないことだ、素直に嫌気がさしてしまう。
先に異変が起きたのは看守役だった。
「なぁ、暴力行為は禁止されてるけどさ。"罰を与えちゃいけない"とは言われてないんだよな」
その中心に居たのはアキラだった。それを囲うように佐野くん、仁科くん、櫻田くんがより集まっている。
それを監視するように春馬が立っているのが、僕の独房から微かに見えていた。
「暴力以外の罰って例えばなんだよ?」
櫻田くんの質問に、笑いながら佐野くんが応える。
「腕立て伏せ、スクワット、ただ立たせる、暴力じゃなくても嫌がらせなんてやりようは幾らでもあるだろ?」
笑ってる。何を話しているのかなんてこっちには聞こえてないけれど、あの面子に、春馬の表情からしても"真っ当な相談"ではないんだろう。
「いやさ。そう言うのも良いんだけどさ……」
アキラは皆に耳を近づけるように手招きをして、小声で伝える。それは、悪さをしようとしていたメンバーが、一瞬ためらう程の常軌を逸した発言だった。
アキラは1番端の独房、原田さんと中澤さんがいる場所を指さして言う。
「なんでもいいから難癖つけて、服剥ぎ取ったら良くねぇ?」
「は?」
「いやいやいや、それもはや犯罪だろ。笑えねぇよ」
アキラの目は本気だった。他のメンバーはまだそれを止める理性を残していたようだが、心のどこかでは暗い気持ちが過っていたのかもしれない。
「冗談だよ。冗談。見回り行ってきマース」
そう言ってアキラは事務室から出ていった。
「あいつ大丈夫か?あれ以来絶対におかしくなってるよな?」
「ああ、小池を殺してから言動が極端になっている気はするな」
僕達はもっと早くに気づくべきだった。あの実験が示していたことを。人の心がどんな環境に置いて突如として悪意に飲み込まれていくのかを。
そうーーーー閉鎖された空間において人間はどこまでも残酷になれる。
僕達は学んだはずだった、だから答えは導けるはずだった。これは『教師役』と『生徒役』に分かれたあの実験室と何ら変わらない、ただ『看守役』と『囚人役』という配役に分けられ監獄という閉鎖空間に詰め込まれただけなのだから。
この監獄という閉鎖空間において、看守という役割を与えられた人間が残酷になるのだ。という当たり前の回答に。
「さぁて、どんな理由をつけていたぶってやろうかなぁ」



