ケンショウ学級

監獄実験1日目

僕達は与えられた役割というものを朧気にしか分かっていなかったので、戸惑いながら過ごしていた。

「なぁ、勉強オタ。オレたちこれからどうなっていくんだろうな?」

僕と相部屋となったのは亮二だった。たまたまだったけど、お互いに気の置けない相手で少し安心できた。

「うん……どうなっていくんだろうね。とりあえず、少しだけの辛抱だよ。きっと、この実験で最後だから……」

その時、僕は敢えて実験のことに対して口をつぐむことを選んだ。『スタンフォードの監獄実験』その恐ろしさを、みんなよりほんのちょっと、でも確かに知っていたから。

特に亮二に本当のことを伝えてしまったら、耐えられないだろうから。

「おい、根暗06番、10番。お前達に名前やニックネームはねぇんだよ。きちんと識別ナンバーで呼び合えよ」

看守役は気楽なものだろう。嬉嬉としてロールプレイに興ずる人が出てきている。なぜ笑ってられるんだ?アキラ。

「囚人共、返事は?」

アキラの言葉に、看守役の何人かが笑っていた。

なんだろうこの気持ち悪さは?ただ平穏に2週間を過ごせば良い。それだけじゃないのか?

「はい……」

「はい、看守さん」

僕と亮二はなくなく返事をする他なかった。この時から囚人役には緊張がはしり始めていたのだ。

アキラはそんな僕達を見て、笑っていた。それはアイツとも同じような異質な、凶悪さをはらんだ笑顔だった。

囚人役には自由はない。みんな自分たちを識別ナンバーなんてもので呼び合う気にもならないし、どんな会話が看守役の"気に障るか"分からないのだから。

「……にしてもまるで動物園だな」

「ははは、それは言い過ぎだろ」

「ちょっと、そう言う言い方は止めなさいよ」

それに対して、看守役達は雑談などしながら過ごしている。この時点で、僕らには派閥とも言える、大きな、そう大きな溝が出来つつあったんだろう。