ケンショウ学級


囚人役も看守役もアイツの口車に動揺させられてしまい、俯いていた。

そして、残酷なアナウンスはまだまだ続くのだった。

「では、皆さん実施実験に参加して頂けるということで、最後の"おめかし"をしましょう」

おめかし?僕らは囚人服に身を包み、佐野くんや春馬達は看守の制服に身を包み警棒のようなものを携帯している。これ以上になにがあるというんだろうか?

「それでは看守役の人達は事務室の緑色のボックスからあるものを取ってきてください。囚人役の人達はそこから動かずに静かに待っていてくださいね」

「なんだ?」

「緑色のボックスって……」

まだ皆、与えられた配役になりきれていない。だから、看守役の人達も戸惑いながら大きなガラス張りの事務室へと入っていった。あれだけ大きなガラス張りだから、あの部屋からも僕ら囚人の独房はよく監視できるのだろう。

「……なによこれ!こんなのひどすぎる!!」

事務室に看守達が入っていった直後、見根津さんの悲痛な叫びがした。

いったい何がそこに入っていたと言うのだろう。

そして直後に、ジャラジャラっと鉄か何かが擦れ合う音が聞こえて、看守達が帰ってきた。

「うそでしょ」

「たかが実験の為にあんなの」

叫び声を上げた見根津さんはガタガタと震えながらそれを持っていた。

「静粛に。では看守は囚人にその『足枷』を付けてください」

看守達が取ってきたのは金属製の足枷だった。鎖を巻いて囚人の行動を制限する為の。

春馬は苦虫を潰したような顔をしながら僕の前に来た。そして、誰にも気づかれない小さな声で「本当にすまない」 と言って足枷をつけた。

右足に重たい金属が巻き付けられた。それも、よりによって親友の手で、いや親友だからこそ春馬は僕を選んだのだろうけれど、なんて酷なことだろうか。

みんなが恐怖をどうにか堪えながら足枷をつけ、つけられている中でただ1人明らかに違う感情をもって枷を付けようとしている人がいた。

「原田さ……いや08番。君には僕が付けてあげるね」

それはアキラだった、ちらっと見たアキラの表情は何かおぞましいモノに取り憑かれているかのようにも見えた。

女子の囚人服は丈の短いワンピースになっていた。アキラは顕になっている膝、ふくらはぎ、足元を舐め回す様に見つめていた。

そして足枷を付けるために屈み、わずかに視線を上げて不気味に笑ったのだ。

「……もしかして、下着も付けねぇのか?くくく」

アキラは舌なめずりをして、もう足枷を付け終えた看守が並ぶ位置にまで戻っていった。そんなアキラと目が合った原田さんは震えながら半歩後退りをしていた。

全員に足枷がつけられ、僕らはより一層に気持ちが沈んでいくのが分かった。まるで潜水をするかのように、暗い暗い水底に引きずり込まれるように恐怖にさいなまれていく。




「それでは、これより監獄実験を開始します」