耳元でカチャっと鍵が開くような音が聞こえて、僕の視覚を封じていた目隠しが勝手に地面に落ちた。
「遠隔操作で開錠できる目隠しとか、ここに来てハイテクなものを・・・」
僕の立っていた場所はどこかに似ていた。僕の他には誰もいない、それどころか歩いてきたはずの後ろには通路などなく壁になっている。横も手を広げれば届いてしまう壁があり、もう前に進むしかなかった。
「入りなさい」
その言葉に招かれて、僕は狭い通路を進んでいく。この先に待ち受けているものは・・・・・・不安と恐怖で心拍数がどんどん上がっていくのが分かった。
1分くらい歩いていくと場所が少し開けていて、鉄製の扉で仕切られた空間に出た。僕はその扉に手をかけてゆっくりと開いた。
「・・・・・・なっ」
そこは気味の悪い通路になっていた。低い天井にはスプリンクラーの様にも、プールのシャワーの様にも見える装置がずらっと並んでいて、そこを抜けた先には丸椅子がポツンと設置されている。
丸椅子には囚人服だろう白と黒のツートンカラーのボーダーの衣服が無造作に置かれていた。そして、今いる場所の右手には施錠できない簡易ロッカーがあり『衣服をすべて脱ぎ消毒をしてから衣装に着替えてください』と張り紙がしてあった。
「・・・・・・ここまでの移送といい、消毒に囚人服って。まさに囚人って感じだね」
僕は衣服を全て脱ぎ捨てて、ロッカーの空いている所にそれらを詰め込んだ。
「よし」
僕が歩き出すと、スプリンクラーからシャワーが放水された。プールの塩素の臭いがしている。全裸で歩かされた挙句にばい菌扱いですか。本当に良い趣味しているなアイツは。
「うわ、冷たっ」
消毒液は震えるほどに冷たく、今が夏だったことも忘れさせるものだった。全身がびしょ濡れになりながらシャワーの通路を抜けると、自然にシャワーが止まった。感知式なのか、誰かが操作しているのか分からないけど。
そこで僕はあることに気が付いた。タオルがない。
「はは、囚人には身体を拭く権利もありませんか、そうですか」
僕は乱暴に丸椅子に置かれた囚人服を手に取って、濡れた身体のままそれを着た。すると急にアナウンスが流れ始めた。
「椅子の下にあるプレートを手に取りなさい」
変声機。アイツかそれとも白仮面だろうか?僕は椅子の下を見た、そこには裏向けなのか白いプレートが確かに置いてあった。僕は慎重にそれを手に取り、裏返してプレートを見た。
「・・・・・・A3206?」
そのプレートには「A3206」と大きく書かれていた。何の番号だろうか?それとも暗号?不思議がる僕の求めている答えはすぐに明らかになった。
「そこに書かれている英数字がこれより君に与えられる名前:識別ナンバーになる。今、この瞬間より君は『上杉 藍斗』という名前は剥奪され『A3206』と呼ばれる。
では、椅子に座ってそのプレートを胸の前で持ち、右手にあるカメラを見つめなさい」
僕は言われるままに椅子に座って、これから僕の名前になるA3206と書かれたプレートを見せるようにして、設置されたカメラの方を向いた。
カメラは強いフラッシュを放ち、僕のことを撮影した。
「それではA3206、プレートはそのまま下に置いて前方の扉を開けて入所したまえ」
「・・・・・・はい」
ゆっくりとプレートを元の位置に戻して、僕は立ち上がる。手前の扉を開け、そして僕、上杉 藍斗はA3206としてその扉をくぐった。



