ケンショウ学級


「さぁ、『囚人役』諸君。到着だよ……」

車のエンジン音が鳴り止み、視覚を閉ざされた僕達が肌に感じていた微弱な振動がおさまっていく。

「出ておいで」

そう言われて、1人ずつゆっくりとゆっくりと車内から出ていく。

どうやら外は砂利のようで誰かが降りる度に、砂利を踏んだ軽い音が奇妙に響いた。

「もうやだ……どこなのここ?」

「振動で酔った、気持ち悪い」

今のは亮二か、そう言えば乗り物酔いしやすかったな。

「さぁ」

変声機の声と共に腕を掴まれた感覚。どうやら後は僕と数人だけのようだ。

そういえば、ここにいる人物はアイツなのか白仮面なのか?どちらにせよ今ここで僕達10人を運搬しているのであれば『看守役』の誰かが予め僕達をここに誘導して何食わぬ顔で参加してくる可能性がある?

いや、そもそもここに10人いるという前提も、僕達が勝手に「ここにいる10人には」という変声機の声によって思わされているだけで実際には9人しか居なくて残る1人が運搬をしている可能性も……なんて、こんなこと考えても無駄か。

何にせよ今はまだ、情報が少なすぎる。

腕を引かれて身体を起こし、僕はゆっくりと地面に足をつけた。やはり砂利の軽い音が微かに響いていた。

「……妙だな」

これは委員長の声か。なにが妙なんだろう?

「委員長なにが--」

「私語はつつしみたまえ。君たちには今自由に会話をする権利はない」

僕の疑問は強制的に抑えつけられてしまった。

「では、収容所に入ります。皆さんの手枷は繋がっているのでゆっくりと前の人に続いてきてください」

目隠し、手枷はしたままか。。。確かにこれは自分が何かしてしまったのではないかと感じてしまうな。すでに実験は始まっているってことか……

視覚を閉ざされていても、意外と歩けてしまうもので繋げられた手枷が引かれる感覚、前の人のおぼろ気な気配と進んでいく足音などから、どんな歩調なのか分かるんだな。

少し進むと砂利の感覚から床のような感覚に変わった。そしてそれと共に古びたサビの様な臭いがした。

「では、ここで止まって。少しだけ待っていなさい」

静寂に身を包まれると急に背筋が凍るような感覚に僕は思わず震えていた。

すると手枷が外されていく。手枷を回収する音がわずかに聞こえて、腕が解放された。

「では目隠しが外れた順に中に入ってきなさい」

コツコツと音を鳴らしながら謎の人物は奥の空間へと入っていくのが分かった。

いよいよ、始まるんだ。監獄実験が。