ケンショウ学級


最後のケンショウ実験は異様なものだった。

これまで同様に散布された睡眠ガスによって僕らはいつの間にか眠らされていた。

「え、なに?!いやっ」

「んんっ、んんー」

急に口を塞がれ、目にはアイマスクだろうか寝ぼけてはいるが目を開けても真っ暗だった。

手は後ろで、縄のような何かで縛り上げられている。

「もがっ、んん」

そのままどこかに放り投げられた。ソファほど柔らかくはないが、床のように硬いわけではない。それになんだか少し振動をしている?

この感じ……車か?!

所々からうめき声が聞こえている。今回は車で移送されるのか?だとしたら学校ではない?

「これより君たちからは最低限の人権以外全てを剥奪する」

変声機の気味の悪い声で恐らく次の実験の説明が始まった。目隠しと拘束をされたまま聞かなくてはならないのは本当に震えるほど怖かった。

「これから君たちが収容されるのは、実際に使われていた監獄を模した場所になる。君たちに名前はない。自由な時間も制限される。衣食住は『看守役』に管理され、ここにいる君たちには『囚人役』として2週間生活してもらうことになる。

その生活が終われば晴れて一月が経ち、君たちは解放される。その生活が終われば……ね」

「ふぅっ、うう」

「んー、んんー」

恐怖から泣いている人がいる。

この説明がされたということは、ここに居るのは囚人役になる人達だ。僕は囚人役になったのか……

この感じだとおよそ10人くらいはこの車に乗っている?クラスを半分ずつに分けているのだろうか。

考えろ。考え続けろ。

これ以上の犠牲を出さずに、このクソッタレなケンショウ学級から抜け出せる方法を。


これから最後の『スタンフォードの監獄実験』が残された20人によって行われる。

僕達はあの時の言葉を、あの実験が示していた恐怖をこれからじっくりと、その身をもって味わうことになるのだった。