ケンショウ学級


食事の回数だって?確かに。

「えっと、シチューの日、カレー、スープリゾット……それに今日のパスタの4回」

櫻田くんが口にして確認をした。

そう、確かにその4回だけ。

「そこで1つの疑問がわくんだけどさ"今日って何日目"なのかな?」

委員長の核心をつく一言。

背筋がぞわっと震えるのが分かった。それはたぶん僕だけではなくて、ここにいる皆だったのだろう。

外界と遮断された密室、時計や日付が分かる物は取り上げられている、身に覚えのない注射の跡、睡眠ではなく強制的に眠らされ、知らぬ間に起きる日々。。。

「……分からない」

「俺も」

「私も」

それは日常にはない言い知れない恐怖だった。

「……でも、アイツは『最後の晩餐』、『最後の検証』と言っていた。実際の時間は考えているよりも進んでいて、もうじき30日が経過する?」

そう言った春馬の考えに中澤さんが補足をするかのように言う。

「強制的に眠らされている時間は点滴で栄養失調を防いでいたとしたら?もし、笹木君の言う通りでもうじき1ヶ月が経つのだとしたら空白の時間がある」

「そこから考えられるのは……まさか実施検証はその空白の時間に行われていた?そして僕らはその映像を後に見せられていた……?

有り得るのか?そんなこと」

委員長の言葉に身の毛がよだつ思いだった。これじゃあ、本当に僕らはアイツのモルモットじゃないか。

「で、結局アイツは誰なんだよ?

こんな場面でもクラスの1人になりすまして陰で笑ってやがるんだろう?なぁ!?おい!!」

佐野くんの一括に皆が緊張する。

「たっちんやめなよ。皆だってもう普通の精神状態じゃない」

その場をいさめたのは田口くんだった。その言葉通りみんなはもう限界が来ていたのだ。

恐怖。

混乱。

怒り。

不安。

様々な感情に飲み込まれながらも、皆はこうして頑張って心を保っているんだ。

「……今日はもう休もう。」

「うん、そうだね」

委員長の言葉を皮切りに、皆が自分の机に戻っていく。教室の中は菊の花の匂いで満ちていて、意識せずともそこにいたはずの友達のことを思い出させた。

こんなことにならなければ、ケンショウ学級だなんて陰惨な殺人ゲームに巻き込まれなければ、皆の中で渦巻いた感情は涙として溢れだしていた。

--僕は少し羨ましかったのかもしれないな。

……団結し始めたこの教室の空気が羨ましく、そして疎ましい。

次で最後のケンショウだとしたら……行われるのは史上最悪とされた心理実験「スタンフォード監獄実験」だろう。

……最後までお前の思い通りになるなんて思うなよ?

次で真犯人を見つけて、そしてこの20人でこの学級から抜け出すんだ。ありきたりで幸福な日常を取り戻すために。