菊の花の香りがまた一輪深くなった。

自ら白仮面と対峙することを選択し、命を奪われた彼が残せたものは白仮面に刻まれたであろう左肩の切り傷と、哀愁の香りだけだった。

それは果たして彼が一つのかけがえのない命を捨ててまで手に入れる価値のあるものだったのだろうか?

あの時、僕は彼の覚悟の瞳に気圧されていたのだろう。無理にでも給食を食べさせることも、誰かが代わりに食料を無駄にしないこともできたはずだった。

やっぱりだ。

僕は、僕らはいつだって後悔するのが遅過ぎる。