「お前は誰だ……?
お前は誰だ……?」
モニターの向こうから続く、呟きが静寂の中でこだましていく。
小さな反響、弱々しい伝播、虚しく消えていく言葉の葬列に、なぜだか不安を覚え身体は震えていた。
「お前は誰だ……?
お前は誰だ……?」
鏡に写るのは自分自身であり、その目の前の光景こそが真実であり、その問いに対する答えだ。
でも、本当にそうなのだろうか?
僕たちの視ている世界は、物理的な世界と、僕らが認識している世界は本当に同じものなのだろうか?
光の屈折が産み出した、視覚と言う名の知覚現象が脳に写し出した、その鏡越しの虚像は確かに自分自身であると、そう言いきれるのだろうか?
「…………あぁ、崩壊していく」
DNAの様に螺旋した思考が絡み合い、それが崩壊していくのを感じる。
「お前は誰だ……?
お前は誰だ……?
お前は誰だ……?」
物理的に元素や分子で構成された寺井くんと、僕らが目で認識した寺井くん。
モニターを通して、1度は電子の正と負の回転という2進数の数値の羅列と化した情報を、再度数万、数千万のセルの組み立てを視覚情報として受け取った寺井くん。
そして、彼自身が鏡という、光の屈折を利用した物体を介して視て、知覚するその寺井くんという人物は全てすべからく同一のモノであると言えるのだろうか?
「お前は………………誰だなんだ?」



