ケンショウ学級


寺井くんは自由の聞かなくなった身体に置かれた、拘束された顔を鏡に向けて呟き続ける。

「お前は誰だ……?

お前は誰だ……?

お前は誰だ……?」

僕たちは言葉を失った。

その異様な雰囲気に、これから起こるであろうものの恐怖に。

「お前は誰だ……?

お前は誰だ?お前は……誰だ?」

呟きが小さな空間で反射する。

より小さく、より弱々しく、より虚しさを孕みながら。

小さく小さく壁に当たり、弱々しく弱々しく床に落ち、虚しさを孕み染み込んでいった。

人は見つめられ続けることが苦手だ。

それは本能的な感情であり、また社会ストレスの一つとしての感情でもある。

幾ら身体に自由がきかなくなっても、がんめんを固定し前を向かせても、眼球の動きまでを縛ることはできない。

勿論、実験を妨げようと目をつむったりし続ければ、何かしらのペナルティをくらうことは、聞くよりも明白だった。

「お前は誰だ……?」

しかし、眼球の自由がきかなくなっても、聞く以上は、意識したとしても、例え視線の先にあるのが自分だったとしても、無意識的に目をそらすようにできている。

その視線の先にはいるのだろうか?

彼がここまでのペナルティを受けながら、一矢を報いようとしている白仮面が。

しかし、あそこまでの拘束の中ではどうしようもないんじゃ?

「たっつん」

僕らの居た小部屋にようやく声が戻る。

小さく弱々しく、虚しさも含んだ田口くんの声だった。

「寺井が言ってたことって?」

「あ?ああ…………練り消しのことか?」

その一言で、隣に居た春馬の形相が変わっていたことに僕は気付いてあげることができなかった。

「まぁ、今は見守ってやるしかねぇよ…………くそっ」

佐野くんのはそう吐き捨てる様に最後に言った。