「ふふふ…………」
なんだ?
「くっくっく。はははははは」
なんでアイツは笑い出したんだよ。
「いや、すまないね。君たちが、全て想像通りのリアクションをくれたから可笑しくなってしまってね」
リアクション?
全て?
皆の「希望」を見つけたと同時に、その言葉を疑う神妙な面持ちは想像がつくだろう。
アイツは、アイツにはこの春馬の怒りに満ちた顔も想像できていたっていうのか?
「春馬…………?」
「…………え、あ、ああ、どうした?藍斗」
取り繕う表情。
でも、目はまだ怒りに満ちているのが分かった。
何を考えているんだ?
そして、春馬お前は何を知っているんだ?
「では、ご褒美の一つ目だが。
『心理実験の概要と考察』その著書を書いたのは、君たちの推察通り…………僕だ」
「やっぱり…………」
「じゃあ、やはりこの実験はあの本を元に行われているのか」
田口くんの言葉を聞いたアイツは手を向けて、言葉を静止した。
「田口くんそれは少し安易に考えすぎだな。
著者は確かに僕だ」
「…………え?」
どういうことだ?
僕以外のみんなも同じ疑問を抱いているだろう。
それを察して、アイツは小さな溜め息を吐いた。
「仕様がないね、もう少しだけ噛み砕いてあげよう。
つまり、その本に載る言葉を、文章を、構成を手掛けたのは僕だ。と言っただけに過ぎないのだよ」
「…………!!」
数人が気づく。
「つまり、その理論を考えた人間は他にいる。ってことか…………」
「著者は目の前のアイツ。それを支える監修としての役割を果たした人間がいて、その人物こそが黒幕?」
僕の考えを聞いて皆もようやく理解した様だった。
そして、それに続いた友澤くんの言葉で更なる恐怖を抱いた。
「んー友澤くん。それは少し妄想に寄ってしまったなぁ。残念ながら、教授はすでに亡くなっているよ」
「じゃあ、結局アイツが黒幕だっていうことか?」
「さぁて、どうだろうか?
さぁ、ご褒美の二つ目だが。この教室から出る方法は最初に言った通り、一月の間このケンショウ学級で生き残ることと伝えたね。
だが、君たちは若干名だが僕の望んでいた以上のフィードバックを与えてくれている。その功績に免じて、もう1つルールを追加しよう」
結局、この陰惨な実験の黒幕についてはうやむやにされたか。
当たり前と言えば当たり前だが。
「大上先生が上杉くんに貸した、その本には彼からのメッセージがあったはずだ」
大上先生からのメッセージ。
つまりは、背表紙に書かれたあの十文字を指しているのだろう。
「改めて言おう。『犯人はこの教室にいる』。その犯人を実験の終了後に皆で指名しなさい。
もし大多数が犯人を見事当てた場合にはケンショウ学級を中止し、速やかに君たちを解放しよう」
一瞬にして教室の熱が冷めたのが分かった。
いや、正確に表現するのであれば凍りついたのだ。
「ただし…………
大多数に指名された生徒が、犯人でなかった場合には、その生徒には罰を受けてもらう」
バラバラになり、寺井くんの勇気で、拙くもまとまりかけていた教室の雰囲気が変わった。
お互いに向けられるのは、疑念。
そして、もしも自分が指名された場合に待つ罰への恐怖が心を蝕んでいく。
…………相変わらず、性根の腐った連中だ。
「さぁでは、今回のケンショウを始めようではないか」



