ケンショウ学級

大上先生がようやく真っ直ぐに生徒を見る。もうその手は震えていなかった。ただの見間違いだったのかもしれない。

「今日は皆さんに大切なお話があります。

その前に皆さんと一緒に観なければならないものがあるので、準備が終わるまで静かに待っていてください」

「え?なにこの雰囲気?」

大上先生はそう言うと、生徒の不安そうな声にも反応せずにプロジェクターの用意を始めた。窓とカーテンを全て閉めていく。

「…………ねぇ、なんだろうね」

「分かんない。でも大上先生の雰囲気あきらかに可笑しいよな?」

暗くなった部屋の真ん中に用意したプロジェクター、それを投影する幕を降ろして、スイッチを入れる。虹色の光が幕に当てられて、先生が操作をすると真っ暗な部屋が写し出された。

「なに?なんか怖くない?」

「誰もいない教室?なんなのいったい」

大上先生は何故か教室の前と後の扉に鍵をかけた。この不自然さに、違和感に敏感になっていたら僕らの未来は変わっていたのかもしれない。

大上先生は黒板の前に出した幕を遮らない位置に椅子を動かして、そこに座って静かに言った。

「--では、静かに観るように」