『キーンコーンカーンコーン』
チャイムの音と同時に大上先生が教室に入ってきた。
「はーい、せ、席について」
しぶしぶと席に戻るクラスメイト達。
「なんか大上先生顔色悪くない?」
「え?」
小池っちに言われて、大上先生の顔を見ると確かに血の気がないような蒼白な顔をしていた。朝に会った時には変わりがなかったのに、どうかしたんだろうか。 まるで何かに怯えている様にも感じるけれど。
「起立、気を付け、礼」
「宜しくお願いしまーっす」
挨拶が終わってもしばらく大上先生は教壇に視線を落として何も話を始めなかった。天然のやらかいパーマのかかる髪の毛が目を隠していることで、その心情を図ることができない。大上先生の違和感に気付いた他のクラスメイトからも不安そうな声があがっていた。
「え、なにこれ?」
「変な雰囲気だね、説教かな?」
僕の席は後ろから二番目でよく見えないけれど、大上先生の手は震えているようにも見えた。しばらくして大上先生はわずかに頭を上げて、ゆっくりと僕たちを見渡した。
そして、自分に活を入れる様に深呼吸を一度して口を開いた。
「…………み、皆さん」



