その後どれだけ電圧が高くなってもアキラくんに躊躇いはなかった。

「…………早く終われよこんなの。耳障りな悲鳴ばっか聞かされて」

死んだ瞳。

もはやその姿は、数多くの犠牲者が出ると知りながらたんたんと収容所にユダヤ人を先導していくアイヒマンと同じだった。

「どうしてやめてくれないんだよ!アキラ!!」

実験を中止しない理由は、研究者が実験を続ける理由より簡潔なものだ。

「オレはただ命令されたからボタンを押してるだけだよ、小池っち」

激しい痛みから悲鳴をあげることができなくなっても、電気ショックはたんたんと流され続けた。

いつしか自分の名前を呼ぶ声さえなくなったが、アキラくんの瞳は濁ったまま電圧計とボタンのみを見つめているだけだった。

「ブース04、生徒役の小池 大輔くんの死亡を確認しました。実験を修了します」

小池っちが息を引き取るまでに浴びた電気ショックの数は26回。

命を奪うに至った電圧は実に390ボルトに達していた。