「私のペアが一徹くんで本当に良かった。命の恩人よ」
「…………あ、ああ」
櫻田くんは見根津さんの言葉に顔を背けた様な気がした。
雨宮さんの暴言に怒りを露にしていた寺井くんだったけど、実は実験中止を申し出ることで眞木さんも自分も助かることができたと知り、雨宮さんの胸ぐらを掴んでいた手は力なく下ろされていた。
「分かったでしょ?ここで生きている先生役は人殺しの人でなしよ!アイヒマンと同じ冷酷な殺人鬼なのよ!!」
「てめぇ。いい加減にしやがれ」
友だちへの侮辱に佐野くんがとうとう切れた。
「なんでだよ…………オレは紗由理のために。
紗由理のために完遂しようと思っていたのに」
佐野くんは雨宮さんに思いきり平手打ちをかました。
中学男子の力は思うよりも強く、雨宮さんはパァンと乾いた音と共に隣の机2台を巻き込みながら左に吹っ飛んだ。
音をたてて机と椅子が倒れる。
「きゃーーーっ!!」
「佐野くん!?」
巻き込んだ机の1つには白い菊が花瓶に生けられていたが、それも無惨に倒れ、花瓶が床に叩きつけられて割れた。
友澤くんが佐野くんを止めようと後ろから羽交い締めにする。
「どけ!ここまで馬鹿げたことぬかすやつはオレが殺してやる!!」
「そんなことしたら君まで殺人鬼になってしまうじゃないか!!
…………あっ」
友澤くんの無意識の言葉に8人の心が崩れそうになった。
無意識だからこその本心。
「違うんだよたっちん。オレは、オレは紗由理を助けたくて!!」
佐野くんの足にすがりつく寺井くん。
「てめぇも、自分の身可愛さに眞木に電気ショック流してたくせに、アイツのためだなんて言うんじゃねぇよ」
「違う!だって、だってアイツが言ったんだ!」
寺井くんの言葉に櫻田くんだけが表情を強ばらせていた。
教室中の視線が寺井くんに向けられていた。
「白い仮面のやつが、もしも最後まで罰を与え続けることができれば生徒役の紗由理をこの『ケンショウ学級』から解放してくれるって!」



