ケンショウ学級

「おい、いい加減にしろよ!」

ああ…………そうだった。

「あ?なんだよ文句あんのかよ笹木」

春馬はいつでも僕の味方だ。いや、この場合僕の味方と限定するのは正確ではない。春馬は正義感が強く行動力もある、弱いものの味方だ。

春馬は席を立ち、僕と佐野くんの間に割って入る。

「こんなことされて喜ぶ人がいるとでも思ってるのか?」

「はぁ?そいつは自分で文句言ってこねぇんだから文句ねぇんだろ?

しゃしゃり出てくんじゃねぇよ偽善者が」

「春馬いいよ、僕は大丈夫だから」

事を荒げたくない僕は、わざわざ僕のことを助けに来てくれた春馬の方を制止しようとする。それが恐らく親友を傷つけていることも本心では分かりながら。

その言葉を聞いた佐野くんはにやりと笑っていた。

「ほら、本人が良いって言ってるぜ?部外者は黙ってろ。

なぁ、上杉そのプリント大事なやつなんだよ。取ってくれよ」

佐野くんは僕にぶつけた模造紙のボールを指差してそう言った。 春馬が佐野くんを睨みつけていた。一触即発のムードに教室はいつの間にか静まり返っている。

「佐野お前マジでいい加減にしろよ?」

「おい根暗、早く取れよ」

佐野くんは、教室の雰囲気も無視して、春馬の言葉など聞こえてないかのように僕に命令をした。佐野くんの周りはこれ見よがしに笑っている。クラスメイトは皆、春馬以外は目をそらしていた。

…………まったく、集団心理はなんとも残酷で理解しがたいな。

「はい、佐野くん」

「……藍斗」

僕は自分に向けて投げられたそのボールを拾って、くしゃくしゃにされたそれを広げて佐野くんに渡した。春馬の視線が少し痛かったけど、それは見ないことにした。

「良いんだよ、ありがと」

「…………っ」