「彼は本当に最後の最後。
死刑判決が下るその寸前まで「私は命令に従ったまでだ」と、自分には責任がなかったと言い張っていたの。
それも表情一つ変えずにね」
「きゃははははー。鬼だね!悪魔だね!
さいっこうにファンキーでクレイジーだねぇ!!」
600万人もの人の命を奪って、自分に責任がないという。
信じられない。
でも、そのアイヒマンと実験とどんな関係があるのだろう。
「この事件で注目されたのは、アイヒマンの「私は命令に従ったまでだ」という、司令官という上からの命令への服従心についてだったの。
果たしてこの服従心による責任逃れはアイヒマンという人物だけのものなのか?
もしかしたら善良な市民と言える一般の人びとでも、特定の状況においてアイヒマンとなり得るのではないか?」
「は~い、わたしもー、あなたもーーアイヒマン!きゃははははー」
僕らがこのアイヒマンに?
人を殺して償いもせず、命令だからだと表情変えずに言い放つ残酷な人間になり得るなんて、そんなことあるわけがない。
「その疑問を持ち実験によって解明しようとしたのが、ミルグラムと言う学者だったの」
「…………ミルグラム!?」
僕は思わずそう口にしていた。
幸いなことに皆はモニターに集中していて誰にも聞かれてはいないようだった。
「彼は閉鎖された空間に置いて人々は権威者による命令に従ってしまう。人々の権威への服従の心理を研究したの」
これで大分、確信が持てるようになってきた。
やっぱりこの一連の検証実験はあの本の順番で行われている。
本には『ミルグラムの実験』と書かれていたけれど、実験というもののタイトルは実験を行った人から名付けられたり、実験の対象を用いて名付けられたりする。
恐らくアイツやフローラちゃんの言う『アイヒマン実験』と『ミルグラムの実験』は同一の物で別称になるのだろう。



