「これから行う『アイヒマン実験』について見学検証の君たちには、本当の実験概要についても説明しておく必要がある。
引き続きこちらのモニターに注目していてくれたまえ」
モニターが切り替わる。
するとアニメーションが流れ出した。
「よく分かる!アイヒマン実験~~!」
ブロンド三つ編みの少女のキャラクター。
3等親ほどの教育番組に出てきそうな女の子だ。
背景は小学生が描いたような花畑。
「この実験は歴史的大事件が背景にあるってことは良い子の皆は知っているかな?
そう、アドルフ・ヒトラーによるユダヤ人大虐殺のことだね!」
明るい声、湾曲した線一つで描かれた笑い口。
その見た目とは裏腹に内容は惨たらしく違和感しか感じられない。
「実験の名前ともなっている人はヒトラーの行ったナチス政権の「ユダヤ人問題の最終的解決」に関与した重要人物よ」
「これぞ、悪魔!人間とは思えないね、フローラちゃん!!」
どうやら女の子の名前はフローラちゃんだったようだ。
更に急に現れたマスコットキャラクター。
「なんかあのキャラクター気味悪いな」
「よく見るとあれ人の首じゃない?」
ネコの様なキャラクターだが、体は斑模様になっていた。
目を凝らすと、そこには無数の首が描かれていた。
それも、一人一人違う顔、表情で。
「ユダヤ人問題の最終解決では約600万人ものユダヤ人が様々な方法で虐殺されてしまったの」
「虐殺!虐殺!あははははー」
「そしてその数多くのユダヤ人達を収容所へと移送する時の指揮官として先頭に立っていたのが、このアイヒマンという人物なの」
アイヒマンの肖像画からは、肖像画特有の印象ではなく、確かな冷徹さを感じた。
社会の教科書でも扱われていたユダヤ人大虐殺。
でも、本当に小さく書かれていただけで授業ではそんな残酷な政権が存在したのだということを紹介するだけだった。
「皆は戦犯(せんぱん)て言葉は知っているかな?
そう、戦争犯罪人のことだね」
「戦犯!戦犯!!きゃははははー」
「戦時国際法に違反した主に指揮官を呼ぶ言葉ね。
アイヒマンは600万人の命を奪った収容所の最前線の指揮官として戦犯とされ、裁判にかけられることになったのよ」
フローラちゃんとマスコットの後ろの花畑が戦火に包まれて、そして場面が切り替わった。
収容所だろうか?
まるで、この密室のような暗く寂しい部屋に切り替わる。
「その中で彼は最終的に自らの責任を認めるまでの間何て言っていたと思う?
本当ならそれほどまでの人々の命を奪ったのだから謝罪や自責の言葉があってもいいものよね」
「ごめんなさいー!ハンセイしてますー!まことに遺憾でございますー!
きゃははははー」



