「はいはい、諸君。
なんだか楽しいことになってるけど、授業が始まるよ」
僕の背中越しのモニターが点いて、アイツが悠々と現れた。
依然としてあの小部屋は薄暗く、その表情すら伺うことができない。
アイツはいつになったら顔を出すのだろうか。
「さぁ、今回行う検証は…………」
そうだ、皆からの疑いが向けられて少しだけ、僕らの立場を忘れていた。
アイツの協力者だと疑おうと、疑われようとも僕らはアイツのモルモットに過ぎないのた。
「ーー『アイヒマン実験』だ」
『アイヒマン実験』?
あの本の順番通りであれば『ミルグラムの実験』と書かれていた。
まさか、あの本は関係ないのか?
「今回の実験は二人一組になって行ってもらう」
「え、てことは…………」
「田口くん回転が早いですね。そう、ここにいる君たちは11人の奇数だ。二人一組にはなれない」
じゃあ、今回は残りの20人が彼検体になったということなのか。
良かった…………
良かった!?
僕は今「良かった」と思ったのか?
20人が命の危機にさらされるかもしれないのに、自分は直接的な当事者ではないということに安心して、「良かった」と喜んでしまったのか?
だとしたら僕はなんて醜い。
「今回も厳正なるくじ引きの元に彼検者とペアを決定しました。
ではモニターを見ていきましょうか。今回は四分割したモニターを五台用意しています」
まったく。自分への嫌悪感を抱くだけの時間もないな。
アイツが後ろを指差したので僕らが振り返るとモニターが点く。
五台のモニターに10人5組がそれぞれ写っていた。
「なぁ、おい」
佐野くんが何かに気付いて田口くんに耳打ちをする。
「…………確かに。おかしいよ、たっちん」
田口くんの言葉に皆が振り返った。
「何がおかしいんだ?」
友澤くんが聞く。
佐野くんはそれぞれのモニターを指差す。
「モニターの中にそれぞれ、クラスの奴らと白仮面が写っている。
ということは白仮面は現時点で少なくとも10人ということになる」
「いったい、こいつらの仲間がどれだけいるっていうんだ?」
ますます謎めいていく。
この時点でアイツは単独犯である確率はかなり低い。
では、アイツに賛同する協力者がここまで多いのかと言うと疑問が残る。
中学生を実験対象にして、いとも簡単に命すら奪う。
そんな検証実験に賛同するような人がどれだけいるんだろうか。
「なぁ、お前らの仲間は何人いるんだ?」
佐野くんはそれを僕に聞いてきた。
「分からない。僕がアイツらの仲間がどれだけいるのか知りたいくらいだよ」
「ふん」



