「僕はそう、君と同じ事を考えてた」
ここで取れる僕の選択肢は3つだ。
真実を話すか、嘘を話すか、そして。
「オレと同じ事を考えてただ?」
「僕もこのケンショウ学級の中でアイツの正体を探らなければならないと感じていた。
このままではきっと、僕たちはアイツの言っていた一月なんてもたずに殺されてしまうかもしれないから」
真実を織り混ぜながら核心のみを嘘で塗り替える。
…………あぁ、なんて遣りきれない作業だろうか。
「で、それとトイレに籠ることと何がどう繋がるんだ?」
特に確信があるわけではない、でもまだ誰にもあの本のことは知られてはいけないと感じるから。
僕はでき得る限りの平静を装いながら、答える。
「独りになりたかった。あの教室では目を背けたくなることが多すぎるから。
確信の持てない考え事なんてする気になれないだろう?」
とりあえず、今はきっと何をどうしても疑いが晴れることはない。
ここでの最善解は、皆の疑いを確信から疑心にまでスケールダウンさせることだ。
「水を流してトイレをしていたフリをしたのは?」
皆の視線がつらい。
「水流さない方が不自然でしょ?それ以上の理由はないよ」
そう。物証がこの場にはない限り、僕の疑いが確定することもない。
そして、例え何があっても疑いの目を一度向けられた僕の疑いを晴らす方法は、今はまだない。
「ふん。だが、お前が怪しいことには変わらない。
もし、お前がアイツと繋がってると分かったらオレは躊躇なく殺すぞ」
佐野くんのその言葉は中学二年のはったりじゃない。
もしも疑いが確定されることがあれば、彼はきっと自分の中の正義の元に僕を殺すだろう。
「うん、そうならないことを祈るよ」
あの本とそして残された赤いメッセージをいつ皆に伝えるべきだろうか。
早ければ尚疑われて、遅かったら疑心は確信に変わってしまう。
あぁ、やるせない。



