「あのトイレットペーパーを折ったのがオレ達だからだよ」
佐野くんが田口くんを親指で指差す。
田口くんも笑っていた。
「誰かがトイレに行く度にオレらのグループで決めたトイレットペーパーの折り方をしていた。
昨日はカレーのせいでトイレラッシュがあって苦労したけど、オレらは順番に割って入るのは簡単だからな」
つまり、こういうことか。
佐野くんは初めからかは分からないけれど、このクラスにアイツにつながる怪しいやつがいると踏んでいた。
そして、あの密閉されて多くの視線が集まる教室の中で唯一自分の思うように動くことができるのがトイレ。
「おい、お前…………アイツの仲間か?」
そのトイレの中で怪しい行動をした人物に疑いをかけるつもりだったんだ。
そして、僕が昨日該当した。
「え、藍斗…………お前」
真っ先にその言葉に反応をしたのは春馬だった。
「春馬!?僕を疑うのか!?」
そして遅れて気づくのだった。
いや、気付くのが遅すぎたんだ。
僕を見る皆の視線は今までのクラスメイトを見る目ではなく、犯罪者を見るかのような目になっていたのだから。
「僕は!僕は…………」
友澤くんが立ち上がる。
「クラスメイトを疑うのは心苦しいが、こんな状況だ。
もし佐野くんの言葉が真実なら、君には昨日の夜のトイレで何をしていたのかを話す義務がある」
どうする?
どうすればいい?
ここで本当のことを言ったら疑いが晴れるのか?
「…………」
いや、皆の視線はもう僕をアイツの共犯者あるいは協力者だと決めつけている。
この状態であの本の話をしたら、逆の立場なら僕もそいつを共犯者であると決めつけてしまうだろう。
僕は原田さんを見た。
これまで見たことのない鋭い視線。
そう、それはまさに親友の敵に向けられるものだった。
「違う…………僕は」
ゆっくりと春馬を見る。
春馬はまだ断定していないのだろう、僕の視線に合わせようとしていることがうかがえた。
でも、これまで一振れもしたことがなかった春馬の僕への信頼が薄れていることは分かった。
「昨日、僕は…………」



