幼なじみとさくらんぼ




「も、もしよかったらなんだけど……来週の日曜日俺とデートしませんか?」

デートという単語にまた心臓が跳ねる。

今日はこの前のお礼も兼ねて軽い気持ちで来たけど、デートだとそうもいかない。

健二くんは私に好意があるわけで、それに同意したら誰だって脈ありと思うだろう。

健二くんはいい人だし、私にはもったいないぐらいの人。だけど思わせ振りなことだけはしたくない。


「私は……」と言葉を発しようとした時、前方で聞き慣れた声が聞こえてきた。


「ナナ?」

さっきのドキッとは違う動揺。

この世界で私のことをナナと呼ぶのはひとりしかいない。

話に夢中で気づかなかったけど、随分と家の近くまで来てしまっていた。


「七海ちゃんの知り合い?」

「えっと……」


健二くんへの返答が曖昧になってしまった。

ハチの格好からしてきっとコンビニ帰り。なんでこういう時だけタイミングがいいのかな。


「幼馴染みの八島です。どうも」

そして勝手に自己紹介もやめてほしいんですけど。

こういう時だけハチはきっちりしてるんだよね。なんのためらいもなく私のことも紹介したりするし。


「幼馴染み?七海ちゃん幼馴染みいたんだ」

「まぁ……」

「はじめまして。松本です。七海ちゃんとはこの前道端で知り合って……ね?」

「う、うん」


なんだろう。すごく気まずいんだけど。

ハチが女の子といても気にならないし、目撃したことも何度かある。だけど私自身がそういう立場になると逃げ出したい気分。

だって私が男の子といるなんて、自分でも想像すらしてなかったことだよ。


「帰りが遅いからおばさんが心配してた」

「え……あ、うん。じゃ健二くんここで。送ってくれてありがとう」

なんだかまたハチの機嫌が悪い気がする。


「あ、七海ちゃん。さっきの話考えておいて。また連絡するから」

健二くんはそう言って来た道を戻っていった。