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結局私はその優しさに甘えて健二くんに送ってもらうことにした。正直ちょっとホッとしてる自分がいる。
予定よりも遅い時間になっちゃったし、家の近所は住宅街なのに街灯が少なくて薄暗いから。
「今日は楽しかったね。七海ちゃんとあそこまで勉強の話で盛り上がれるとは思わなかった」
「わ、私も」
健二くんは自然に車道側を歩いてくれてるし、車が来ると私をかばうようにそっと手を出す。
本当にモテる人とはこんな人のことを言うんだろう。
外見も内面も完璧でさらに医者志望。私なんかに声をかけなくてもたくさん相手はいそうなのに。
「七海ちゃんって今まで誰かと付き合ったことある?」
「……それが一度も」
こんな時は嘘でもひとりぐらいはと言った方がよかったのかな。だけど話を広げられたらマズいし、虚勢を張らなくても私なんて見た目で恋愛経験のなさが滲み出てる気がするし……。
「実は俺もないんだよね」
「そ、そうなの?」
「だからカッコよく送るよなんて言ったけど、こういうのも初めてで。今日もつまんない男だって思われてるんじゃないかって不安だった」
健二くんがふいに私の方を見るからドキッとしてしまった。
カッコいいのにカッコつけてないところがいいなって思ったり。きっと裕子に話したらそんな完璧な人いるの?ってビックリしそうなぐらい。



