「だって七海ちゃんが落ち込んでるように見えたから」

「え?」

「本当にフラフラしてたしちょっと心配になって。俺いつも落ち込むとここに来るからさ」


健二くんはそう言って機械が投げてくるボールを次々と打ち返した。

考えてみればバッティングセンターも初めてだな。不良の溜まり場のようなイメージだったけど全然そんなことなくて、学校帰りの学生たちが楽しそうに遊んでる。


「落ち込んでたというか……少しイヤなことがあって」

スマホの電源はまた切ってしまった。

家に帰ったらアドレスだけでも変更しよう。ラインは全て消したくないから迷うけど最悪アプリごと消去もやむを得ない。


「もしかして彼氏と喧嘩でもした?」

「あ、いや。彼氏はいないから……」

「え!マジで?七海ちゃん可愛いから絶対いると思った」


……可愛いなんて言われたの何年振りだろう。

男子と話すこともあんまりないし、私は誰かさんと違ってモテないし。だからこの感覚っていうか……ハチ以外の人とふたりきりなのが慣れない。

健二くんはそのあと椅子に座ってる私にジュースをくれた。


「あ、お金……」

「いいのいいの。俺が勝手に連れてきたんだから」

「ありがとう」

鈴高って医大目指してる人がほとんどだし、すごい堅いイメージだったけど健二くんはそんな感じじゃないな。

初対面なのに話しやすいし、さっき会ったばかりなのにフレンドリーに接してくる。

私そんなに心配されるほどフラフラしてたのかな?

まぁショックというかこれからのことを考えてたし、明日学校に行きたくないなんて思ったのはじめてだよ。