「ちょ、重い!なんでハチが6組にいるの?」

「次体育だから通りかかっただけ」

あぁ、だからジャージ姿なんだ。ハチは体を動かすのが大好きだから体育の前だと少しテンションが高い。逆に体育なんて無くていいのにって常に思ってるけど。


「八島くんこんにちは。お菓子食べる?」

「うん!食べる!」

祐子はそう言って限定の紅いもタルト味のポッキーをハチにあげていた。考えてみればふたりは大の甘いもの好き。私が痩せない理由がここにあると思うのは気のせい……?


「今進路の話してたんだよ」

「進路?早くない?」

「早くないよ。八島くんは将来とか決めてるの?」

ふたりが話してるのってなんだか新鮮だな。祐子ならワガママなハチを厳しく教育してくれそう、とかそんな下らないことを考えていた。


「俺は体育教師になりたいなーって思ってるよ」

「え!教師!?」

大声を出してしまったのは私だった。

どうせハチのことだからなにも考えてないと思ってたし、その質問をハチにすること自体間違いだって祐子のことも否定しかけちゃったけど……いや、それは置いておくとして。

ハチが教師なんて冗談でしょ?

そんなこと聞いたこともないし、教育関係とか一番遠い場所にいる人だよ。


「ハチ。体育教師って体育以外の勉強もちゃんとしないとなれないんだよ?」

「分かってるよ。勉強はこれからすればいいじゃん。あ、もう体育館行かなきゃ!またね」

まるでハチは嵐のように去っていってしまった。