「ハチも少しは勉強したら?体育教師になる夢はどうしたの?」
「するよ?これから」
どうしてこんなに能天気なのだろう。私がせっかち過ぎるのかな?ハチといると自分の感覚が狂いそうになるから困る。
「その漫画私もまだ読んでないから読まないでくれない?」
「えー」
私はハチの読んでいた漫画を取り上げようとしたけど、上手く交わされてしまった。手の長いハチは左右に漫画を振って私をからかっている。
「もう、ハチ!」
大声を出した瞬間、足元に落ちていたクマのクッションにつまずいてしまった。
「うわっ……」
するとハチはガシッと私の体を受け止めて、顔を上げるとその距離は息がかかるほど近かった。
「ドジ」
「う……」
もう裕子や田村くんがヘンなこと言うから意識しちゃうじゃん。
私は慌てて体勢を戻して、勉強なんてできないのに机に向かっているふりだけした。
ハチはなにごともなかったように鼻唄を口ずさみながらまた漫画を読み始めてるし。
だ、大丈夫大丈夫。
これはビックリしたのと、こういうハプニングに慣れてないだけだから。っていうかそもそも私が意識したら終わりだよ。
ハチは私に躊躇なく触るし距離が近くても動じない。それはハチが私のことをそういう対象で見てないから。
だから私だってこうしてハチを部屋に入れるわけだし、幼馴染みなんて恋愛に発展したら終わり。
裕子は距離が近すぎて見えないものがあるって言ったけど、近すぎるから見えなかったものが見えてしまうことだってあると思う。
最近の私はちょっとハチに対してヘンだ。
もっとハチ離れしなくちゃ。
このままだと今までどおりの関係でいられなくなる気がして怖い。



