「こんなこと言うと偉そうに聞こえるかもしれないけど、男って好きじゃない人でもできるって言うしね」

「……」

「七海は八島くんの首にキスマークがあった時どう思った?嫌だって思ったんでしょ?」

「そ、それは……」

「嫌っていうのは八島くんが幼馴染みで家族みたいだから嫌なのか、その行為自体してるかも?って考えるのが嫌なのか、それとも異性としてのヤキモチで嫌なのか七海はどれなの?」


そんな難しいこと急に聞かれても分からない。

あの日からハチが遠くにいってしまったような気がして、考えると胸が苦しいというか、複雑な気持ちになるけど。


「私が八島くん離れしなって言ったのは七海に気づいてほしかったから」

「気づく……?」

「距離が近すぎて逆に見えないものってあるでしょ。だから八島くんと離れたら七海にも見えるものがあるんじゃないかって思ったのよ」


そんなことを言われても私にとってハチはハチだもん。そう裕子に言ったらまた深いため息をつかれてしまったけど。