「あ、波瑠の家どっち?遅くなっちゃったから送っていくよ」

「ええ?」

ビックリしすぎて大声がでた。

これは嫌だとか否定的な意味じゃなくて、こんな展開想像すらしてなかったからその……。


「送らせて。波瑠女の子だし心配だから」

「……う、うん」


きっと私じゃなくても亜紀は優しくするんだろうけど、それでも女の子扱いされたことが嬉しかったし胸がきゅってなった。

亜紀は自然な流れでこういうことを言ったりしたりできる人なんだろうけど、私は慣れてないし免疫がないから亜紀の言動にいちいち過敏になってしまう。

その心のバロメーターを読まれないように、話をべつの方向にした。


「そ、そういえばチーム名って誰が考えたの?」

〝春風〟と書かれたオリジナルのものはウインドブレーカーだけじゃなくて試合の時に着るユニフォームにもデザインされていた。

みんながおそろいのものを着るっていいな。

陸上部でもオリジナルのウインドブレーカーを作る話になってたけど冬になる前に辞めちゃったから。


「俺だよ。春風っていい感じだろ?」

「うん。でも亜紀が考えたなら秋風のほうが良かったんじゃない?」

ギャグのつもりで言った。まぁ私は偶然にも自分の名前が入っていて内心はニヤついてたけど。


「だって俺、〝はる〟が好きだから」

――!!

その不意討ち反則だよ。本当に私は免疫がないからやめて……。


「あ、今ドキッとしたでしょ?」

「しし、してないから」

「ぷっはは」

「もう、なんで笑うの?」


そんなやり取りをしていたらあっという間に家の近所に着いた。