望遠鏡は間近で見ると全体が分からないほど大きくて、細かいネジや部品がたくさん付いていた。

望遠鏡の一番長い先端は天井に向いていて、室内なのに真ん中だけ穴があってそれは空へと繋がっていた。

普段はきっと閉じられているんだろうけど、先輩のお父さんが開けておいてくれたのかもしれない。


「この望遠鏡ね、レンズが150㎝もあるんだよ。国内で一番でかいものらしいよ」

「そうなんですか?すごい……」


普通の望遠鏡すら見たことがない私がこんな立派なものを最初に見てしまっていいのかな。すごい贅沢というか……なんの知識もないのに申し訳ない気分。


「覗いてみる?」

だけどやっぱり見たい気持ちが上回って、先輩の言葉に私はゆっくり頷いた。そして……。


「うわ……っ」

そこには今まで私が見たことのない景色が広がっていた。

見えたのは青紫色の世界。吸い込まれてしまいそうなほどの美しさで、周りにはキラキラと息をするように星が輝いていた。

もっと私に言語の能力があればと悔しいほど、キレイだとか感動って表現じゃ足りない。


「それね、オリオン大星雲っていうんだよ」

「オリオン……だいせいうん?」

「そう。地球を飛び越えて空の向こう側。宇宙にあるもの。そこは星が生まれる場所なんだよ」


……宇宙なんて、私にとっては仮想みたいなもので。

地球が本当に浮いてるとか宇宙の中にある星のひとつとか、そんなのは知識というだけでリアルなことじゃなかった。

だけど今私は宇宙を見ていて星が生まれる場所も知って、こんな世界が本当にあるんだって分かったら、ここにいてこの景色を見られてることが奇跡みたいに思えた。