「どうした?」

先輩は私の隣に座った。

ここのコンクリートみんな出入りしてるからキレイじゃないし、先輩の制服が汚れちゃう……なんて、まだそんなことを考えられるってことは今の現実を受け入れていないのかもしれない。


サッカー部と陸上部は同じグラウンドだし、いずれ私が辞めたらすぐに分かると思う。人づてに色々と先輩が知るのは嫌だから、せめて自分の口で。


「私、陸上部辞めることになりました!」

暗い顔は見せたくない。


「あのあと病院に行ったら生まれつき骨が~とか難しいこと言われちゃって。速く走ったりすると悪化して歩行困難になるかも?なんて言われちゃいましたよ」

「………」

「だから陸上部はやめて新しい部活に入ることにしました。文化部って思ったより沢山あって迷いますね~。先輩はなにがいいと思いま……」


――その時、また先輩に頭を叩かれた。

しかもこの前とは違って、強めに。


「強がりもムリして笑うのも波瑠が余計に苦しくなるだけだよ。ちゃんと俺には言ってよ。本当の気持ち」


だけどすぐにまた優しい顔になって、叩いた手で頭を撫でてくれた。

なにかがゆるんだようにポロポロと涙が溢れてきて、私は先輩の前で大泣きしてしまった。