そのあと亜紀は病室に戻ってきて、お母さんは仕事があるからと先に帰っていった。

亜紀の病室には真新しいキレイな花と窓は閉まっているのに少しだけ外の匂いがした。


「だれかお見舞いにきたの?」

「うん。午前中に春風のみんなが来てくれた」

フットサルのチームメイトたちも、まさか亜紀が重い病気だなんて気づかないだろう。

亜紀の見た目は変わらないのに腕には無数の点滴針の痕があって、それが痛々しい。


「波瑠もせっかく休みなんだから凪子ちゃんと遊んできてもいいんだよ?」

「いーの。私は亜紀と遊びたいし」

「これって遊んでるっていうの?」

「い、言わないかもしれないけど、それでもいいの!私は亜紀といられるだけで嬉しいんだから」


面会時間が終わって、家に帰っても私はずっと亜紀のことばかり考えている。

亜紀は大丈夫かな?ちゃんと眠れてるかな?って、すぐに亜紀に会いたくなる。


「天文台に行くって約束したのにごめんね」

「なんで謝るの?天文台なんて元気になればまた行けるでしょ?」


亜紀と行きたいところが沢山ある。

これから長い戦いになったとしても、必ず笑って今日の日のことを振り返れる時がきっと来るはず。