「じゃ、学校サボれちゃうね。病院って暇そうだし毎日顔を見にきてあげるよ。あ、添い寝もしてあげようか?なんかこの布団って固くて寝づらそうだもんね~」

自然に言ったつもりなのに、亜紀はなぜか私の顔をじーっと見ている。

やばい……わざとらしすぎた?


「波瑠」

「な、なに?」

「来て」

亜紀は両手を広げて私のことを包みこむように抱きしめた。


「……急にどうしたの?」

私の顔はちょうど亜紀の胸にあって、そこから亜紀の心臓の音が聞こえてくる。

ドクンドクン……っとゆっくりで、とても穏やかな音。


「なんとなく、ぎゅってしたくなっただけ」



ねぇ、亜紀。


16歳だった亜紀はすごく大人で、私はいつもそれに甘えて寄りかかってた。

14歳だった私は亜紀と同じ年齢になって、同じ学校の制服を着て、亜紀の時間が止まったあの冬を追い越そうとしてる。


今おもえば16歳なんて全然大人じゃなくて。

心だってまだまだ未熟の雛鳥みたい。


亜紀、ごめん。


キミはそんな幼いままであの日々を戦っていたんだね。


今なら言えるのに。

大人じゃないのに大人ぶらせてしまったねって。

今なら、追いかけるばかりじゃなく、肩を並べて歩けるねって。たまには私が引っ張ってあげるよって。

同じ16歳の私なら言えるのに。


ねぇ、キミを追い越して私はどこに行けばいい?


幼いままの、高校1年生の亜紀を置いて、私はどうやって大人になったらいいの?