どうして私はあの人が亜紀だなんて思ったんだろう。

後ろ姿が似ていたから?それともこの学校の中に亜紀がいるかもしれないって期待がまだあるから?


「藍沢」

いつからいたのか知らないけど、後ろには本を片し終わった夏井がいた。


「ここにいると眠くなるよな。面倒だから次の授業サボらね?」

夏井はさっきの人がいた椅子に座って、まるでネコのように日向ぼっこを楽しんでいる。


「亜紀もこの場所にきたことあったのかな……」

自分の意思とは関係なく、声に出して言っていた。


亜紀は誠凌に半年しか通ってない。語るほどの思い出はないかもしれないけど、この場所に来ていたらいいな……。



「ねぇ。夏井が亜紀に出逢った時ってどんな感じだった?」

私の知らない4年前の亜紀を知りたくなった。

うまく言えないけど……なんとなく今知りたくなった。


「うーん。あの頃の俺ってまだ小6で。イキがってたっつーか俺のプレーが一番上手いって思いこんでて。だから最初は見下してたんだ。塚本先輩のことも」

「………」

「でもあの人のボール追いかけてる姿見たら、ああ、俺一生勝てねーわって。そんぐらいサッカーもフットサルも大好きで向上心も人一倍あって。マジで尊敬できる先輩だったよ」


夏井は当時を振り返るように遠い目をしていた。