図書室は3階の一番奥にある。

入学してから一度も来たことはないけど、日当たりが良くて勉強できるスペースもあって落ち着く空間だった。


「ちゃんと戻してって言われたから、藍沢はその手に持ってる半分をよろしくなー」

夏井はそう言ってタイトルのあいうえお順に本を棚に戻していった。


手に持ってる半分って、夏井が無理やり押しつけたんじゃん。どうせ適当に戻しても怒られるのは私じゃないんだし……。

そんなことを思いながらも、ちゃんと本を確認してる自分が情けない。


それにしても図書室って本当に静かだなぁ。入口からは死角になってる場所も多いし、授業とかサボれちゃいそう。

戻す本が残り一冊になって、ふと窓際を見るとテーブルにうつ伏せになって誰かが寝ていた。


……ドクン。

胸がざわめいている。

その後ろ姿と広い肩幅。日に当たって茶色くなっている髪の毛に少し丸まってる襟足。

とっさに上履きを確認したら3年生の色でまた心臓がうるさくなった。


「……あ、あ……亜紀?」

そう小さく名前を呼んだあと、持っていた本がするりと滑っていってバサッと床に落ちた。


ビクッ!とその音で飛び起きたその人。

時計を確認して慌てて図書室を飛び出していったけど、亜紀とは別人だった。