新学期。私は中学2年生になり、亜紀は高校1年生になった。


「えー今日もやるの?」

「うん!お願い!」


週末の日曜日。私は亜紀の部屋で〝あるお願い〟をしていた。私が会うたびに同じことを言うから亜紀は困った顔をするけど、それでも私は「お願いします」と催促する。

「しょうがないなぁ」と亜紀は着ていた洋服を脱いだ。そして……。


「カッコいい~!」

私があまりに興奮してしまったから、ゲージの中で眠っていたケンがビクッと目を覚ましてしまった。


私がお願いをしていたのは、誠凌高校の制服を着てもらうこと。

もう何度も見せてもらったけど、亜紀と会えるのは休日しかないし。そのカッコいい制服姿が見たくて、こうしてワガママを言っている。


「もういいでしょ」

亜紀はそう言って恥ずかしそうにブレザーを脱いだ。


はぁ、何回見ても素敵だなぁ。

亜紀は背が高いからブレザーだと余計にすらっとして見えるし、中学は学ランだったからネクタイ姿ってだけでヤバすぎる。


「高校生活はどう?けっこう慣れてきた?」

私の膝の上に移動してきたケンをなでながら聞いた。


「うん。楽しいし誠凌はいいところだよ。購買で売ってるパンも学食の食べ物もすごく美味しいし」

「えーそうなの?いいなぁ」

「だから波瑠も2年後においで」


もし、私が誠凌に入学したら亜紀は高校3年生になっている。また校内で亜紀を見つけたり、お昼を一緒に食べたり、放課後は手を繋いで制服デートしたりなんかして。

そんな夢みたいなことができるかもしれないと思ったら、誠凌に行きたいって気持ちがますます強くなった。