「もしかして女子に掴まってるんじゃない?さっきあっちでずっと好きでしたって告白してる子いたよ」

たしかに想いを寄せている先輩がいた人は、もうこの日しかチャンスはないと勇気を出している子もいる。

凪子の言うとおり亜紀も告白とかされちゃってるのかな……。


すると、突然だれかに肩を叩かれた。


「波瑠」

声と同時に振り向くとそこには亜紀の姿。


よかった。見つかった。ちゃんとお祝いの言葉を言いたかったし……ってあれ?

最後の制服姿の亜紀に違和感。
だってだって……。


「ボタン全部ない!」

思わず叫んでしまった。


「え?ああ。なんかすごい勢いで囲まれて……気づいたらなくなってた」

それは清々しいほどに第一ボタンから袖のボタンまでひとつもない。


亜紀の第二ボタンが欲しかった。だってそれは一番心臓に近い部分で、好きな人の心の傍に三年間いたそのボタンを貰うことが密かな夢だったのに……。

事前に予約しておけばよかった。

そんな落ちこんでいる私を見て亜紀が言った。


「波瑠にはもっといいものあげるよ」

「え?」

「今日の夜会える?」

もちろん会える。会えるに決まってる。私が頷くと亜紀は安心したように友達の元へと行ってしまった。