100万回の祈りをキミに



そういえば亜紀の交友関係とか仲が良かった人のこととか、あまり知らないな。

色んな人に慕われてたし友達も多かったけど。


もしかしたら亜紀の会話の中にそれらしき人はいたかもしれないけど、亜紀とふたりきりになるとつい浮かれてしまうから、きっと聞き逃してしまったことも多いと思う。

大切な場面だけじゃなくて、たわいない会話の
一語一句でさえ覚えていたいけど、それは不可能で。

今私にできるのは、幸せだったあの日々を悲しい記憶で塗り潰さないことだけ。


「あ!あの一番眩しい星なんだか知ってる?」

すると突然、夏井が空を指さした。

夜空なんて見上げたくないけど気になってちょっとだけ確認したら、たしかにそれはキラキラと光っていた。


「……オリオン座でしょ」

「え?お前すごくね?なんで知ってんの?俺最近知ったんだけど」


いや、そもそもオリオン座は小学校で習うし。
きっと夏井のことだから昔から不真面目だったんだろうな。

夏井はそのあとも知ったかぶりの知識で、あの星は、この星はと語りはじめた。


きっと私が今見ている景色を亜紀が知らないように。

亜紀には亜紀の世界があって、どんな嬉しいことがあって、どんな楽しいことがあって、どんな苦しいことがあったのか、それは本人にしか分からないこと。

だから私のこの気持ちも……私にしか分からない。


亜紀は私に言いたいことはなかった?

まだ伝えてないことはなかった?


私はね、たくさんあるよ。

会いたい。亜紀。会いたい。