「本当にありえないよね!お前らになんの関係があるんだって思わない?」

綾乃は落ちこむというより怒りの感情のほうが抑えられないって感じだった。


「一緒に帰ったりしてるだけで調子に乗ってるとかさ。自分たちに彼氏がいないから単なる僻みなんでしょって私もムカついてきちゃって」

「まさかそれ言ったの?」

「言ったよ。そしたら思いきり打たれた」

「うわ……」


気持ちはわかるよ。でも本当に言えちゃう綾乃がすごいっていうか度胸があるっていうか……。


「中学ってこういうのあるって噂で聞いてたけど本当だね。いちいち文句つけてきて先輩がそんなに偉いのかって話」

「このこと彼氏には……」

すると威勢のよかった綾乃の声が突然小さくなった。


「……言ったよ。彼氏さ、私の前では武勇伝みたいに昔こんなことしてとか怖い人と仲がいいとか言ってたのに実際は全部嘘で」 

「………」

「私に文句言ってきた3年の先輩の後ろにけっこうヤバイ人が付いてるらしくて。私の為に言い返してくれるのかなって期待したけど自分も目を付けられたくないから別れようって言われた」

「綾乃……」

「そんなもんだよね。中学の恋愛なんて。私少女漫画好きだから色々と理想を膨らませすぎたのかも」


綾乃は潤ませた目を隠すように作り笑いを浮かべていた。

私はうまく言葉が見つからなくて、なんて励ましたらいいのか分からない。


「とりあえずこれからは前みたいにソフトボール頑張るよ。顧問の先生も球拾いから参加させてくれるって言うしさ」

そう言って綾乃は立ち上がった。

綾乃ならまた良い人見つかるよ、なんて軽々しく言えないけど、今度はきっと悲しい結末じゃない恋愛ができるように私は応援してる。


「あ、そうだ。波瑠も気をつけたほうがいいかもよ」

「え?」

「亜紀先輩モテるから。知らず知らずの内に目付けられちゃう可能性もあるからさ」