「な、な、なになに?」

凪子がとっさに私の腕を掴む。

そのあとケラケラと3年の女子たちが出てきて、あの時と同じ展開。まさか……。

おそるおそる確認すると、奥には綾乃がうずくまっていた。


「……綾乃!」

すぐに駆け寄ってその肩に触れた。

泣いているかと思ったけど涙は出てなくて、その代わり綾乃の右頬が赤くなっていた。一部始終を見ていたわけじゃないけど、なんとなく状況が読みとれる。


「もしかして……打(ぶ)たれたの?」

そう聞くと綾乃は小さく頷いた。


「わ、私ハンカチ濡らしてくるから待ってて!」

凪子はすぐに流し台へ。

3年の女子はこの前の人たちと同じだった。
ずっと気になってはいたけどまさか叩かれるなんて……。


「綾乃……大丈夫?」

「ぜんぜん余裕」

綾乃の強がりの性格は知っている。SOSの合図は何回かあったのに、なにもしなかった自分が情けない。


「ごめん綾乃。私この前目撃してて。彼氏絡みなのかなって思って聞けずにいたんだけど……」

「彼氏絡みっていうか、彼氏いるだけで生意気だって目付けられて。それから度々こうして呼び出されてた」


それだけの理由?

恋愛なんて自由だし彼氏がいたって別に普通のことなのに。