すると蒼井は体をこちらに向けて寝大仏のような姿勢をした。
「お前さ、今朝俺に変わった事はないか聞いたよな?」
「うん」
「俺だってムカつく奴とか都合悪いやついっぱいいるけど、俺は向こうと変わらないし絡んでくる他校の奴らとかヘドが出るあの家とかそのまんまなんだよ。残念な事に」
ヘドが出るあの家?
聞きたいけど今は追及しない方が良さそうだ。
「だからここにいたいと思わないし、まぁ、あっちに帰っても一緒だけどワケわかんない所にいるよりはマシかなってぐらいしか思ってねーんだけど……」
蒼井が少し間を空ける。
下から突き刺すように見るその目はあまり直視したくない。
「お前、ここがけっこう居心地いいんだろ?」
反論しようとしたけど動揺の方が先に勝ってしまった。それに覆い被せるように蒼井の言葉は続く。
「そりゃ、そうだよな。ここはお前の都合のいい世界だし」
────都合のいい世界?
それは真逆になってしまった人達が私にとって都合が悪かった人って事?
「最後にお前を見た時すげー暗い顔してたからこっちに来て笑ってるお前を見て一瞬違う人かと思ったよ」
何故かドキッとした。
蒼井も私の知らない私を知ってる。その口から現実にいた私の姿が語られたのは初めてだった。
「俺とお前が屋上から落ちたのは事実だし嘘じゃない。俺は死んでるなら死んでるで別にいいし、
生きてるなら生きてるで今まで通りだし。
とりあえずここが死後の世界なのか夢なのかお前の妄想なのかはっきりしねーのはイラつく」
つまり、蒼井と一緒に落ちたはずなのに現実にいた記憶は私しかなくならなくて、
現実とこっちとで同じ名前同じ人物なのに全く違う人が居て、それは私に関わる人だけ。
だから蒼井は私の為だけの世界、私の都合の良い世界だって言った。もし本当に私が作り出してしまったのなら……なんの為に?



