午後の授業を受けてる間も私は透明になった手や腕を何度も見返した。肌の感覚はあるし触ったら体温だってある。

でもさっきのは気のせいなんかじゃなかった。

ここは現実じゃないし私がここにいる事自体説明は出来ないから、半透明になった現象もなんとなく受け入れる事ができる。

でもそれってどういう事?

もし全てが透明になったら私は消えるの?
この世界から居なくなるってこと?

消えたらどこに行くの?それこそあの世とか?

今までこんな現象起きた事ないのになんで今こんな事が起こったんだろう。もしかして最初から
タイムリミットがあったとか?

………後で蒼井に聞いてみよう。

もしかしたら同じような事が起きてるかもしれないし。


「……あかり」

授業が終わってボーっとしていると突然名前を呼ばれた。最近教室で声をかけられる事がなかったから自然と背筋が伸びる。

「ノート。提出まだでしょ?」

それは美保だった。

そういえば今日の日直って美保だったっけ。美保と話すのは久しぶりで私は慌ててノートを出した。

「ごめん。はい」

美保は相変わらず沙織達のグループにいる。騒がしい声や笑い声が聞こえてしまう距離では居心地が悪くて教室を飛び出す時もあったけど最近はそれも気にならなくなってきた。

ノートを渡したはずなのに美保はまだ立ち去らない。

その顔は何か言いたそうで、もしかして蒼井との事を聞きたいのかな?関わらない方がいいとか言ってたし……

「あ、あのさ、あかり……」

美保が言いかけると向こうで沙織達が大きな声を出した。

「美保~?まじこれウケるから見て!」
「この前の写真ヤバすぎ。何度見ても笑える」
「変顔大会とか沙織が言い出すからでしょ~」

ケラケラと笑う声が美保を呼んでいる。

美保はその口を再び閉じて、結局なにも言わなかった。