どいつもこいつも表面しか見ようとしないで、
誰かを蹴落とす事で力を手に入れたような、有利になったような、そんな錯覚を起こして平気で人を傷付ける。

蒼井は確かに素行は悪いし口も悪いよ。
でも人を傷付ける事は絶対にしない。

私が悩んで苦しんでもがいてる時、何度も立ち上がる言葉をくれた。

──「誰かがお前を笑っても俺はお前を笑わない。だからもう少し背筋伸ばせ。クズみたいな奴らに埋もれるな」

そんな事みんな誰かに言える?

ニコニコと自分の素顔を隠して成績が優秀でも
あいつには真似できないものを蒼井は持ってる。

笑われるのなんて怖くない。

100人が敵になっても私は私の事を理解してくれる1人がいればそれでいい。それだけで強くなれる。


「蒼井は犯人じゃないっ!!」

息を大きく吸って叫んだ。

さっきまであんなにざついていたみんなが一瞬静まり返って私に注目してる。

私はスタスタと生徒の波を歩き進んでその足は
保坂幸成の前で止まった。

「あんたが指示してやらせたんでしょ?」

私の顔を見てピクリと保坂の眉が上がったけど、またすぐに気持ち悪い笑顔に戻った。

「指示?俺が?」

まさかという風に笑いまで誘ってる。周りもなに言ってんの?って顔で見てるしクスクス笑ってる奴らもいるけど私はそんなので怯まない。