「手遅れ、か」

 美晴はつぶやいた。

「でも、やっぱり好き……なんだもん」

 一緒にいて空気のように思えるということは、一緒にいるのが自然だということ。見栄を張ったり繕ったりせず、自分らしくいられるということ。

(だから、貴幸とは一生一緒にいられると思ったんだけど……彼はどう考えているんだろ)

 忙しくて考える余裕なんてないのかもしれない。だからこそ、二人の気持ちを前に進めたくて、同棲する前のようにプレゼントを用意したのだ。でも、肝心の彼が帰ってこない。

 シャワーを終え、バスルームから出て体を拭いていたら、玄関ドアが開く音がした。

(帰ってきた!)

 美晴は体にバスタオルを巻きつけ、緊張してドキドキしながら廊下を覗いて声をかける。

「おかえりなさい」

 靴を脱いでネクタイを緩めていた貴幸が、美晴を見て、疲れた顔に驚きの色を浮かべた。

「ただいま。まだ起きてたんだ」
「うん。お疲れさま。今日も遅かったんだね」
「ああ。年末が近いからな」