「いや、適当じゃないって。東さん、3年目なのにすごく優秀じゃん、正直なところ。」
「はぁ…ありがとうございます。」

3年目なのにというところが気にくわない。3年目の割にというお前の見る3年目の人は今までどれだけいたというのだろう。
内心そんなことを思っても、顔ではヘラヘラする。それは芹田への対応としては一番の正解であることを美樹は心得ている。

「でも、もうすぐ運動会の練習が始まりますし芹田先生の出番が増えるじゃないですか。」
「まぁね。」

満更でもなさそうな顔をして、口角を上げる芹田を見ては心の中で盛大にため息をつく。

(だからこの人はだめなんだよなぁ…。)

芹田は苦手だ。この上から目線も、自分のことに盲目なところも。多分挙げ始めたらキリがない。

「芹田先生、飲みませんか?」
「深山さん。」

(ナイスタイミング深山先生!)

そう思って美樹が深山を見ると、深山が行っておいでとばかりに手を振った。美樹は誤解をなんとかすべく、1人になった藤澤の隣に座った。

「ごめんね、ほんと。気が回らなくて。そんなに気に病ませているとは知らなかった。」
「いや、だって本来、僕の仕事だったわけですよね?」
「まぁそうだけど。でも誰もが初任の藤澤さんには無理だと思ってたし。私も無理だと思ったし。」

そう言っても、藤澤はどこか納得していない様子だ。

「初任の頃の私には絶対無理だったなと思ってるよ。だから、藤澤さんに回ってきたのも不思議だなと思ってた。…何言っても無駄かもしれないけど、ほんとに気にしないでほしい。藤澤さんのせいじゃないし、あと話しかけにくい先輩でごめんなさい!」

美樹は両手を合わせながら、頭を下げた。

「えっ!?あ、頭上げてください。」
「いやほんと、ごめんね。色々気を遣わせてしまって。」
「そんな、それは全然。僕の方こそすみません。出来もしないのに、手伝いたいとか。」
「いやいや、…それは私も思ってたことだから。出来なくても手伝いたいって思うよね。ありがたいなってちゃんと思ってるから。」

藤澤は思ったよりも考え方がしっかりしてるのかもしれない、と何となく思う。今までこんなにきちんと話したことはなかったからこその発見だ。