────…落ちる
そう、心で思った時だった。
「……華沢っ」
そんな声と共に、あたしの身体はなにかに包まれた。
途端、訪れた衝撃。
そのまま階段を転げ落ちて、ダンッという打ち付けた音がひびき、身体がとまる。
痛い。
けど、おかしい。
だってあたしは、最後の打ち付けただろう音の時、なにも痛さを感じなかった。
そして、転げ落ちている最中の衝撃も少なかった。
ギュッと瞑っていた目を開けて、あたしは息を呑んだ。
「っ……無事、か?」
なんで……
なんで、響くんが、あたしを抱きしめてるの……?
あたしを包み込むようにして、抱きしめている響くんの顔は、苦痛に歪んでいる。
「ひ、響くんっ」
慌てて起き上がって、わかった。
あたしが落ちる瞬間、なにかに包まれたと感じたのは、響くんの腕。
つまり、あたしと一緒に響くんは階段を落ちた。
あたしが受けるはずだった、衝撃のほとんどを身代わりに受けて。
「ど、どうしよう…っ」
「……これくらいどうってこと無い。心配すんな」
どうってこと無いって顔してないよ!!
なんで、なんでこんなこと……!
「……華沢、怪我してねぇか」
「あ、あたしのことなんて、今はどうでもいいよ!とにかく先生呼んでく……っ」
立ち上がろうとした時、右足にズキッとした痛みが走った。



