キミと初恋、はじめます。







「ふぁ……」



二時間目の授業が終わり、あたしは大きく伸びをした。



久しぶりに翔空に会えたっていうのに、響くんに会った途端、不機嫌になっちゃうし。



相変わらずマイペース王子だよね。


あたしはプリントを持って、ガタッと立ち上がった。




「あらシキ、どこ行くの?」


「職員室!プリント出してくるよ」


「一人で平気?」


「うん!すぐ戻るから大丈夫!」



心臓するなっちゃんに手を振り、あたしは早足で教室を飛び出す。



職員室、職員室……



階段を降りようと足を踏み出した時だった。



────…ドンッ




「へ……っ」



誰かに背中を押された。


地面に足がついていなかったから、そのまま前に放り出される。



え、なにこれ?


落ちる瞬間、あたしは後ろを振り返った。


目に捉えたのは、知らない数人の女子。


把握出来たのは、そこまで。


転がり落ちるレベルじゃなかった。


〝宙に飛んだ〟の方が正しいかもしれない。


20段ほどの階段。


一番上から10数段、あたしは宙を飛んでいた。


ただでさえ、運動神経はあまり良くないあたし。


着地しようにも、平らな地面ではない階段の上……


飛んでいる間なんて、1秒そこらなのに何故かものすごく時間がゆっくりと流れていた。