◇
「ふぁ……」
二時間目の授業が終わり、あたしは大きく伸びをした。
久しぶりに翔空に会えたっていうのに、響くんに会った途端、不機嫌になっちゃうし。
相変わらずマイペース王子だよね。
あたしはプリントを持って、ガタッと立ち上がった。
「あらシキ、どこ行くの?」
「職員室!プリント出してくるよ」
「一人で平気?」
「うん!すぐ戻るから大丈夫!」
心臓するなっちゃんに手を振り、あたしは早足で教室を飛び出す。
職員室、職員室……
階段を降りようと足を踏み出した時だった。
────…ドンッ
「へ……っ」
誰かに背中を押された。
地面に足がついていなかったから、そのまま前に放り出される。
え、なにこれ?
落ちる瞬間、あたしは後ろを振り返った。
目に捉えたのは、知らない数人の女子。
把握出来たのは、そこまで。
転がり落ちるレベルじゃなかった。
〝宙に飛んだ〟の方が正しいかもしれない。
20段ほどの階段。
一番上から10数段、あたしは宙を飛んでいた。
ただでさえ、運動神経はあまり良くないあたし。
着地しようにも、平らな地面ではない階段の上……
飛んでいる間なんて、1秒そこらなのに何故かものすごく時間がゆっくりと流れていた。



