「お父さんが、お兄ちゃんの何を知ってるの?」
「……どういう意味だ」
そんな事も分からないくせに。
お父さんは、子供のあたし達の気持ちなんて、結局何も考えてないんだよ。
頑張ってるお兄ちゃんの事を、一度だってこの人は応援した事は無い。
2年前もそうだった。
歌手になりたいから出ていく、と言い出したお兄ちゃんを、頭ごなしに怒鳴りつけた。
〝夢なんてくだらない〟
そう言って。
それでも、お父さんの言葉なんて全く聞かずにお兄ちゃんは、出ていった。
もちろんそれから、お父さんとお兄ちゃんが話す事なんて一度だって無かったと思う。
あたしでさえ、2年の間……数えられるほどしか話していなかったんだから。
それでも……
「……お兄ちゃんは、今の仕事に誇りを持ってる。 なりたかったのは歌手かも知れない。それでも、今のモデルって仕事は、お兄ちゃんにとって大事な大事なものなんだよ」
「シキ……」
そしてあたしは、お兄ちゃんがまだ歌手になるって夢を諦めて無い事を知ってる。
学園祭で歌っていたお兄ちゃんは、モデルの仕事をしている時と同じくらいキラキラしていたから。



