「シキ」
ステージに立ったまま、ニヤッと笑いながらあたしの名を呼んだお兄ちゃんに、嫌な予感が的中した。
会場が一気に静まる。
「お兄ちゃん……何考えて……」
「久しぶりだろ、俺らのセッション」
あたしとお兄ちゃんを驚いたように見る翔空と祐介くんの視線を感じる。
……確かに昔、まだお兄ちゃんと一緒に暮らしていた頃は。
夜、空に浮かぶたくさんの星を見ながら、よく歌のセッションをした。
色々な曲を、ただ楽しいってだけの気持ちで。
でもあれは…お客さんひとりいない、二人っきりのライブだった。
「っ……無理だよ!」
「無理じゃない。音楽は上手さじゃないって昔言っただろ?楽しめればそれでいい」
お兄ちゃんは持っていたマイクをおろして、あたしに近づくと、ステージ上から手を差し出してくる。



