「あー、いや。あいつ、女装はやっぱり断固拒否ったらしくて、翔空だけは普通に男装になったってクラスの奴が言ってた」
「えっ、それじゃあなんで?」
逃げる理由がないよね?
それとも、いつものマイペース?
「もうすぐ開店時間だろ。さすがに初っ端、翔空がいなかったらやばいって。あいつ目当てで来る客も多いからさ」
翔空目当て、ということは、女の子だろうか。
その事に少し心にモヤがかかる。
「……わかった。あたしも、開店時間まで探してみるね。見つかったら連絡しますっ」
「悪ぃな、シキちゃんも忙しいのに。俺もぎりぎりまで探すから、なんかあったらすぐ連絡して!あ、それから、9時以降はぜってぇ1人で行動すんなよ!」
最後の言葉はよくわからなかったが、とりあえず返事をして電話を切った。
なっちゃんに素早くチャットメールをうって、 翔空の事を知らせるとすぐに自分も探すと返事が返ってきた。
翔空に電話をかけたけど、出ず。
「……もう、翔空ってばどこいったの?」
廊下を走りながら、空き教室や特別教室を覗くけどどこにも居なくて。
翔空のサボリ場所……
屋上か、医務室か、花園……
でも屋上は確か、この学園祭で使っているはずだから休む場所はない。
ということは……医務室か花園。
とりあえず〝医務室〟にやってきたあたしは、コンコンッとノックし、ガラッと勢いよく扉を開けた。



